−私たちの病院では使っております。化学療法をアグレッシブにするかどうかという一つの目安としてパフォーマンスステイタスに重要な位置をもたせています。
Andrew 非常にアグレッシブな化学療法を行うのに適しているかどうかということを見るためにも重要だと思います。みなさまがたご存じだと思いますが、わたしたちのところではECOCのパフォーマンススケールを用いています。そしてこのECOCのパフォーマンスステイタスの数字が高くなると化学療法に対する反応が芳しくないと考えられます。副作用に対する耐性が低く、また生存の可能性も低くなります。
ここでもう治療を止めたほうがいいのではないかということについて、癌の専門医と自分の間で意見の合わないことがあったという方はいらっしゃいますか。
−いつもです。
Andrew 治療を止めるべきかあるいは継続すべきかということについて、双方が合意に達するためのべースとしてこのECOCを使うことができると思います。
−パフォーマンスステイタスの判定に関してはドクター側が低く評価しがちで、ナースが高めに評価する傾向にあると思います。ドクターは多少アグレッシブであっても何とか助けたいという意図的なものが含まれていると思いますし、患者さん側がドクターに対してはわりと頑張っているという部分を見せたがるというところがありますし、看護婦には甘えるという傾向があります。それでナースとドクターは評価が割れるところだと思います。
医学的観点から見た兆候
Andrew 非常に面白い意見をいただいてありがとうございます。
予後の評価判定ということでナースの観点から今度はWendyに話をしてもらいますが、彼女もパフォーマンスステイタスの評価を行っていますが、ECOCよりも広い観点からパフォーマンスの状態がどうであるかというやり方をとっています。末期の患者さんにおいてその予後を予測するための因子は他にもいくつかあります。
『Palliative Medicine』という雑誌がありますが、そこにローゼンタール等がオーストラリアのホスピスにリファーラルで入院をした人たちを対象にして調べたものを発表していますが、いちばん最初にリファーラルを受けてから実際に入院をするまでにどれくらいの期間を要したかということが検討項目の一つに加えられています。リファーラルとは病院あるいはGPの先生から紹介をされてホスピスに入院するということです。これは紹介をしてきた先生がかなり時期が経ってから遅い段階でホスピスにその患者さんを送ったという場合も考えられますけれども、このタイミングを見ることによって患者さんの癌のヒストリー、それからテンポに関する情報を得ることも可能だろうと思われます。
予後の予測因子として考えられるものとしてECOCのパフォーマンスステイタスが3あるいは4の場合、それから収縮期血圧が90以下の低血圧、1l当たり19マイクロモル以上のビリルビン血の場合、それから予後が悪いということとは相関がないと考えられたパラメーターとしてどのようなものがあるか、この患者グループで見た場合にはこれらは関係ないと思われたファクターです。心不全、脈拍、それから呼吸数が高い、熱が高い、病気のタイプは関係がなかった、前の段階での治療も関係がない、モルヒネの投与が開始されているかどうかも関係ない、それから体重の減少が非常に大きいというのも関係がない、アルブミンのレベルが低いのも予知性がなかった、錯乱とか転移がいくつあるか、それからカルシウムのレベルが高いというのも関係がありませんでした。
だからといってこれらのパラメーターがまったく関係がない、役に立たないといっているのではありません。この中にはいくつかの有用なパラメーターもあると思うけれども。この研究に関する限りはこれらのパラメーターは関係がないと緒論づけられたという意味です。ですから個々の独立したパラメーターとしてはいま挙げたものはこのスタディーに関するかぎりは重要ではなかったということです。
ですから、医学的な観点から予後を判定するための新しいファクターをこれからも私たちは探し求め続けなければなりません。最終的には何が原因で患者さんが死ぬのかということを十分に理解しておく必要があります。死が差し迫ったという兆候が何であるのかということについてはナーシングスタッフのほうがさらによくわかっている場合もありますので、Wendyにその兆候を説明してもらいます。
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